最近の読書など

やっと語学から離れて読書できて幸せです。

奇想天外・英文学講義―シェイクスピアから「ホームズ」へ
高山 宏
4062582007

借りた本。「超」文学研究者、高山宏の自らの英文学研究を総決算した「しゃべりおろし」の本。マニエリズム、ピクチャレスクなどの概念を手がかりに英文学をほぼ越えた様々な話が次から次へ。まあ話された言葉なのでちゃんとした研究所ではないのだが、16世紀以降の主に視覚文化からみたヨーロッパ思想史の良いブックレビューになる。その驚きや魔術性を強調するあまりにマニエリズムの当時の科学との関係性から見た総体などがいまいち伝わらないのは少しばかり不満だ。
自分の研究にとってはテーブル・トークと呼ばれるジャンルの著者でありモーツァルトの初めて批評したトマス・ラブ・ピーコックという人物を知ったこと。自分の卒論では高級文化を対象とした批評と大衆文化を対象とした批評をその構造的違いから断絶したものとして描いたが、最近はどうもそうでもない気がする。高級文化を対象とした批評もその対象が大衆文化としか言えない時代もあり、その時代には批評の価値はやはりコミュニケーションにあったのだろうと思う。トマス・ラブ・ピーコックがテーブル・トークという領域で活躍していたことを考えると。

ユリイカ 2006年1月号 特集 マンガ批評の最前線
4791701429

これも借りた。基本的にマンガは自分の専門外であるが、去年からかなり読むようになってるし、大衆文化の批評の一ジャンルとしてマンガ批評がどういった方向に進むか興味深く伺ってる感じである。
なによりもこの本
テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ
伊藤 剛
4757141297

が発売されたことに関する対談がおもしろかった。「キャラ/キャラクター」や「フレームの不確定性」といった問題に関する議論が興味深かったが、『テヅカ・イズ・デッド』を読んでないのでいまいち掴めなかった。まあとにかく『テヅカ・イズ・デッド』買って読もうかな。なぜかこのブログのアフィリエイトから一冊売れているのだが。それ以上に自分の興味分野からするとマンガ批評が過去の批評言説にアンチを唱えることによって、その自律化が促進されたこの状況自体に興味を感じているのだが。
他では本としての形式のマンガを読む時の我々の視線とコマワリの関係を論ずる『視線力学の基礎 読者の〈目〉が漫画に与える力◆イズミノウユキ 』がかなり新鮮だった。今まで本当にタダのマンガの読み手(それもかなり怠惰な読み手のほうだ)だった自分にとって、マンガのコマに潜む運動性、心理描写などは目からウロコでした。