近代の起源としての魔術的なものとか芸術的なものとかマニエリスムとか

試験も終わり落ち着いて好きな本が読めるのでかなり嬉しい。研究分野と多少はなれたところも今のうちに乱読しとく。
魔術の帝国―ルドルフ二世とその世界
R.J.W.エヴァンズ
4582744095

以前からミュージアム(日本語では書きにくい概念だ…)の起源としてのいわゆるブンダーカマー、クンストカマーの類に興味があったのだが*1、今回はもっと大きな意味での16世紀後半から17世紀のヨーロッパ精神史を勉強とコレを読了。
しかし前半の16世紀、17世紀の中央ヨーロッパ史と宗教史の話はかなり難しいというかさすがに歴史学専門じゃないからかなり飛ばし読みだった。だいたい神聖ローマ帝国史ってやつは高校の世界史でもなかなかのツワモノだから、宗教改革諸派の対立の細かいところになれば何がなんだか。あとオカルト関係の用語のヘルメス主義やらルルス主義だとかも何がなんだかわかんなかったけど、wikiペディアを参照しながらなんとかやっとで読んだ。
それでも美学を学ぶものにとっては後半のマニエリスムとオカルト、中世的な宇宙観を論じた章はいまでも非常に刺激的であった。以前読んだ高山宏奇想天外・英文学講義―シェイクスピアから「ホームズ」へではあまり明らかに書かれていなかったマニエリズムとオカルト諸学の繋がりや、この時代特有の世界観が良くわかった。
宗教的な対立が激化することで当時の多くの人文主義者たちが中世的な宇宙観、新プラトン主義、オカルトなどに再び傾倒していき、その活動から近代的な科学や教育、啓蒙といったものが生み出されるという半ば逆説めいた話は非常におもしろかった。
あと単にこのルドルフ二世の宮殿と当時の文化的雰囲気を想像するためだけでも面白い。対外的にはオスマン・トルコの軍勢やプロテスタント諸侯との対立、ローマから訪れる教皇大使やイエズス会といったカトリック勢力、宮廷内では多数の芸術家や工芸家錬金術士が集い、豪華絢爛な象徴的な儀式が執り行われ、動植物や機械や芸術品、宝石の収集など、まさにスペクタクルな雰囲気があって誰か映画にでもマンガにでもしてくれよって感じである。マンガにするならコレ
へうげもの 1 (1)
山田 芳裕
4063724875

みたいな感じになるであろうか。なんにせよ群雄割拠の戦国の時代と芸術品という物の関係は東西を問わず考察したい問題である。偶然にもルドルフ二世の時代と信長、秀吉の時代は同じであるということからも興味が惹かれる。
あとそうそう、あの未だ人を魅了してやまない機械時計に対するフェティッシュな欲望の背後には魔術があるんだっと思って、時計好きの気持ちに納得しました。