芸術の秋

ってわけでもないですが、連れられていった軽井沢のセゾン美術館で齋藤芽生の展示を見てきました。
http://www.artunlimited.co.jp/meo/
はっきりいって現代美術の良き享受者ではない俺ですが(というか半ば愛憎が混じった敵意さえ持っている…)そんな僕にも楽しめたんで、珍しくアートのことについての私語り。
齋藤芽生の今の作品は廃れ行く時代遅れな都市の相貌をモチーフとして、それを花輪や遊具といったこれまたアナクロな感じのものに再構成するといったもの。すごく感覚的にいっちゃえば最近の歌謡曲や昭和の雑貨、建築などへのノスタルジーに近いもんがある。といっても親しみを持った懐かしさというようなノスタルジーという感覚よりも、ある種の違和感や緊張をもった懐古的感覚に近い。それは多分、日本の戦後の大衆文化に残存していた不健全な感じへの憧れかつ、現代の文化の健全性への批判でもあると思う。(若い世代の現状への不満と過去への愛惜が混ざったものといえば、ノスタルジーというよりも現代のドイツのオスタルジーという感覚により近いのかもしれない。まあオスタルジーについてはあまりよく知らないが…)
同時に展示されていた曽谷朝絵の作品がその健全性にゆえに大企業からの買取があるのと対象的に齋藤芽生の作品はほとんど買い取られていないのもなんとなくわかる。
とすると齋藤芽生は「現代美術」(あの森タワーを象徴的なものとする意味での)としては成功しないのかもしれない。というか個人的に言えば、そのような「現代美術」としての成功は望まないというか、望みたくない。もちろん作品が売れることによって成り立つ芸術家の生活を害してまでとは言わないけれど…。でも齋藤芽生の作品がより生きるのは、大企業の待合室じゃなくて新宿ゴールデン街のバーやスナックであるのは間違いない。
あと付け加えると齋藤氏は現代のアーティストの中では非常に語ることが多い気がする。作品においても言葉やタイトルに表れるウィットが魅力になっている。
齋藤氏のブログ
http://meoflora.exblog.jp/
なんというかどちらかというと現代美術好きという人よりも、森山大道などの都市の写真とかが好きな人にウケる気がするので回りの友人に勧めてみたい。
てことでこの日記の今のオススメは面影ラッキーホール齋藤芽生です(笑)