読書メモ

以下読んだ。
ポピュラー音楽は誰が作るのか―音楽産業の政治学
生明 俊雄
4326652950

既に日本のポピュラー音楽研究では古典とも呼べる名著。ニーガス、ピーターソンなどに英米における音楽産業論を日本において検証したもの。ポピュラー音楽についての哲学理論的なことは一通り研究したので、今後、産業論や参与観察などに手を伸ばすため勉強している。音楽家としての業界研究でもある。というか、今まで読んでなくてすんません・・・
基本的に日本の音楽業界の記述として非常に有用な一冊であるが、ピーターソンの理論である音楽を抑制、促進させる6つのファクター*1に、生明氏が「芸術的先見性」を加えているのが新鮮であった。もともとビクターで音楽産業に従事していた生明氏がこのような美学的な観点をもっているとは思ってませんでした。ある意味、トインビーの音楽の創造性の研究にも相通ずる、産業論から美学へという流れは確実に今後のポピュラー音楽研究を考える点で重要であります(なんたってトインビーはカントを勉強しているっていってたから(笑))。
日本の音楽産業の基本的な流れは作家や原盤制作の集約化と分散化という二つのフェイズにまとめられるけど、昨今の原盤制作の分散化はもう飽和状態にあると思われるから、今後の産業の動向はかなり気になる。生明氏も指摘しているとおり、原盤権の重要性を再認識したレコード会社は自前で原盤を作るようになっているというわけだから、音楽産業の集約化は再び起こるような気もする。とはいっても、まあ最近は本当に誰でも音楽作れるから、大きな資本に頼るメリットは流通と宣伝以外にないよなーと感じている。
ところで私がアンセム、アンセムといっていたメルトなんだけど、ソニーから発売されることになったらしい。これの権利関係がどうなっているか非常に気になります。どうもリマスターしているようだけど、実質上、ソニーは流通と宣伝だけをやるってことなのかな。
http://www.supercell.sc/album_pre/
お次は
遊びの現象学
西村 清和
4326152184

西村先生の初期の傑作です。ちょっとゲームについて何か書いてくれという依頼が来たので、とりあえず遊び論を入門しています。というかまだ読んでなかったんだよね。というか現象学わから(ry
言い訳はともかく、西村美学において重要な仮想的とされる仮象論に対する論駁がこの本でかなり大きくされているのが発見だった。仮象論についてはなんども本人に質問しているが、いまいちよくわからなかったけど、この本を読んでもまだちょっと理解できていない。というか現象学わから(ry
しかしながら、ホイジンガやカイヨワなどの遊び論から、現象学的美学、解釈学、ジンメルやギデンズなどの社会学ピアジェなどの心理学、ロールズやハートなどの法哲学など本当にすごい領域の議論をこのように横断して議論する力量はすげえ。おもしろい論点は多数であるが、個人的には最後のギャンブルについての章が興味深かった。ギャンブルって本当に不思議でまさに美学的な論点だと思う。

*1:技術、法制度、市場、職業意識、組織構造、産業構造