帰省先の本棚

帰省して実家にいるときはやはりちゃんと勉強する気にはならない。結局親父の本棚を覗いて濫読してしまう。それにしても話題の人文書ならなんでもある親父の本棚はエライというかミーハーというか。たまに同じ本を買ってるときがあって人知れず赤面することもたびたび。

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち
内田 樹
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話題の内田本である。内田本はほぼすべて実家にあるというのはまさしく親父は人文系ミーハーとしか言いようがない。まあ便利だけど。
三浦展の話よりもまあ共感ができるところが多いけど、今日の日本の問題は精神論で語ってもしゃあないというか、結局政策的になんとかせなあかんと思う。格差社会下流社会は本質的に問題としては違うとは思う次第である。とはいっても「師になる条件は師を持ったことだけだ」とか「学びってのは遅れてきたものから始まる」とかそういった話はいちいちうなづけてしまうものである。なんにしろ自分の後輩たちの文化的なものに対する貪欲さのなさに関しては体の髄から感じているのは、俺が親父になったからだろうか。どうも最近の大学生は大学生という感じではなく、それこそ電車の中でR25とか読んで事足れりとしているのは危機感を感じる。とりあえず大学に入ったなら構内で24時間酒を飲むとかデフォルトでやっちまう感じがないとダメじゃないのかと思うのである。そう俺がいたバンドサークル今年新入生がなかった終わっちゃうんだよな。マジでこれが。下流とかともかく、みんななんかやれよ、ともかくと思う。

文壇アイドル論
斎藤 美奈子
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斎藤美奈子は相変わらずの毒舌っぷりで小気味良いが、田中康夫に関してはちょっと誉めすぎなんじゃないかと。一番新鮮だったのは80年代の林真理子の立ち位置で、俺らの世代にとって林真理子はすでにまっとうな作家だったんで知らんかったです。彼女が苦労人であることは。まあともかく暇つぶしにはちょうど良い本でありました。

差別と侮辱

なんだか事の発端は良く知らないけど最近のはてなの中で話題になってることでさすがにコレは違うよってことは書いておく。
差別ってのはあるカテゴリーの平均的な特性とか偏見的な特性によってある個人を評価するってことであって、そのカテゴリーへの個人的な評価とかそういうのは関係ない。自分は反社会的(というか要は法を犯している)ような職業以外には職業差別的な感情はまったくないと思うけど、知人がソープ嬢を始めるとかホームレスを始めるとか言ったなら止めるように説得する。それは職業差別とはまったく関係ないもんで、単にそのような生き方が楽ではないからである。だってソープ嬢にしろホームレスにしろ大変なのは確かである。ほかにお金を稼いだり、生きていくことができるならそのような選択肢を選ぶ必要なんてないでしょう。もちろん現状を見た上でソープ嬢でしかやっていけないと言うならばそのような選択肢に対して反対することはないけど、そうではなければ違った方を進めるのは当然だろう。そしてこれが別に職業差別ではないことはまっとうな頭がある人なら分かることだと思う。もちろんその待遇の悪さにも関わらずセックスワーカーであることが自らの誇りであるならば、その生き方に対してとやかく言う筋合いがないのである。ただ知人がセックスワーカーになるとか言い出すことに対して、それを止めるように説得するだけで職業差別とか言いだす輩はどうかしている。差別って意味を分かってない。
あとセックスワーカーに対して差別意識がないといった人に対して「で、結婚相手はソープ嬢?」って聞いてキレられたとかいう性格の悪い人が「差別意識がないのなら怒ることないじゃないか」とか正論じみたことを言っているが、これは間違いである。侮蔑表現というのは意味論のレベルで判断されるのではなく、常に語用論的、つまり言語行為的に判断されるものである。たとえ職業差別意識がないと公言している人に対してにでも職業差別意識がある人が「で、結婚相手はソープ嬢?」と聞くのは明らかに無礼である。人種差別意識が無い人に対して「ってか在日だからねー」って差別意識がある人がいったなら、それは明らかに無礼であるのと同様に。