研究関連で読んだ本

長らく更新が滞ったのは私が学会発表を控えていたためであり、地震の影響ではないが、学会発表は3/12であって地震の影響がモロに出た。主に私の発表内容に(笑)。そもそも地震の直前までちゃんと準備していなかったことが悪いのだが、余震の中、発表の準備とかできないし、まさか行わないだろうと思ってたところ10時ころから指導教官から電話「今日やるみたいですよ。ちなみに私はいけません」なんだってーていうか本当に強行開催すぎて、学会発表した後に安否確認のメールがくるとか意味不明な展開であった。まあ私の発表の内容のひどさも地震ということで言い訳することにして、ゆっくりしっかりと勉強したいと思った。特に現代における存在論の応用的問題とメタ存在論について考えることがいろいろとある。これ自分で考えても仕方ないからいろんな人と話し合う必要があると思われる。
前置きが長くなったがこの本、研究と関連して読んでたけど一応メモってく。

穴と境界―存在論的探究 (現代哲学への招待)
加地 大介
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本書の「存在」は以前から知っていたが、好事家的関心しかなかったが、自分も存在論をやっていると言っている限り現代の存在論について日本語で読めるものはなんでも読んでおけと思い、それに倉田さんの入門のやつにもいちおうこの本にも入門についての「部分」はあるとかで手にしたわけである。内容については1章が現代の存在論についての概説、2章が穴、3章が境界、あと付論。前書きのこれが分かりやすいというかぶっちゃけている。

したがって、すでに存在論的諸概念には習熟しており、ひたすら穴と境界にのみ興味がある人(そんな人はあまりいそうにないが)は、第2章から読み始めても構わない。また、逆に穴と境界などというマイナーな対象に関心が無く、むしろ存在論を中核とした現代(分析)形而上学の概要だけ知りたい人(そんな人は本書を買わないだろうが)は、第1章に続いてただちに付論を読む方が効率的だろう。
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まっさきに思うわけですよ「別々の本にしろよなーーー」(笑)
まあ私は後者のことが知りたい人なので1章と付論を参考にさせてもらおうと思ったけど、やっぱり入門にはちょっと記述が少ない。なので2,3章を読むことで存在論的な議論の仕方の作法を学ぼうとは思って読んだけど、3章の後半はちょっと難しい。ちゃんと読めばわかりそうな話をしているが、境界への愛が足りないのかな(笑)
まあそれでも1章では形而上学存在論の関係、現代的な存在論の流れなどが分かりやすく記述されている。ちょうど別で読んでいたAndrew Kaniaの論文でストローソンの記述的形而上学の話が出てきたので参考になったところもある。

実際、少なくとも直接的には「存在」に関わらない形での現代における「形而上学」の定義がいくつか存在する。例えば、ストローソン(P. F. Strawson)は、自らもその構築を企てた「記述的形而上学(descriptive metaphysics)」の課題を、「世界にかんする我々の思惟の現実の構造を記述すること」と規定し、その目的を「われわれの概念構造のもっとも一般的な特色を明らかにすること」に求めた。
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音楽作品の存在論についてのKaniaのメタ存在論的主張は非常に雑に言えば、「音楽作品なんてどう考えても文化に依存した概念やから、そのためにやるべきことは我々の概念をより明確にすることであって、『本当の』世界のあり方を求めるものではない。そのためストローソンが言っているような記述的形而上学という方法論がふさわしく、またその路線では根源的には音楽作品など存在しないというフィクショナリズムをシリアスに受け止めるべき」というものだ。これよくわかるんだが、その場合、音楽作品の存在論っていうよりもそれは概念分析なんじゃないかと突っ込まれるが、まあ別に方法の名前なんてどうでもいいのかもしれない。
ただいろいろ読んでいて、存在論を議論することはいったいなんなのか、どう議論すべきか、その目的は、というメタ的な疑問ばかりとめどもなく溢れてきて、私の頭は結構ごっちゃになってきたかんじがあったので、発表の準備が滞ったのであった。
音楽については、とりあえず作品という概念は後においておき(友人からの指摘によれば、そもそも作品とは何かというような評価的・価値的問題は存在論の問題ではないのではという意見もある)、我々の現代人が日常接する「音楽的な物事」(とりあえず音楽的は未定義語でいいだろう)をうまく分類して、それらの関係を明確に記述することが先決だろうと。そのような対象として「楽譜musical notation」、「録音物track」、「楽曲piece or song」、「演奏performance」、「再生playback」があるんじゃないかというところまで考えたけど、まとめ切れず発表には活かせなかった。今後の課題とする。

なんかゴチャゴチャしたが、以上。抽象的なことばかり考えてたときに地震とかきてマジ焦ったわ。