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原稿の仕事の波をなんとか乗り切ったから、研究とか趣味とか適当な読書を行える状態になった。まだ原稿あるんだけどね。
考える耳 記憶の場、批評の眼
渡辺 裕
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ボスの著書。毎日新聞の音楽時評のまとめであるが、続編も同じく春秋社から出ている。授業でネタとして使われたものもあったので、取り立てて新しいことはないのだが、それでもまとまった形で読むといろいろと感慨深い。音楽時評といっても特定のCDやコンサートを取り上げて批評するようなものではなく、社会と音楽の関係を時事ネタを挟みつつ考察するというもの。クラシックの研究から文化研究という方向に展開していった極めて渡辺先生らしい内容である。
通して読んだ感想としては、なんというか一貫した社会への批判の目がすごい。というか、ある意味で(今はどうだか分からないが)朝日新聞的な日本の穏健な左翼的な立場を一貫しつつ(このコラムが毎日新聞であることが逆にやりやすいのかもしれない)、小泉政権や安直な右傾化をところどころで批判する態度は現代ではすごく貴重なあり方に感じた。ガチの音楽研究者には新聞のコラムともあってそんなに啓発的なことはないが、音楽を研究したい、卒論のテーマに悩んでいるという学生には格好の素材となるだろう。コラムの中で扱われたことを深く調べ、考えるだけで卒業論文としては十分なものになるだろう。