読書でしょでしょ!

タイトルは特に意味がない。このところ読んだ本について。
チョムスキー入門 生成文法の謎を解く
町田 健
433403344X

認知脳科学から言語学への関心の高まり(要するにマイブーム)と、http://d.hatena.ne.jp/taninen/20061212/p1で紹介されてたこともあったので読んだ。
うーんと、なんつーか文体が予備校教師みたいってゆーか、慎重なのは分かるけどいまいち面白さとかが伝わんない。これ読んで言語学に興味を持つ人がいるんだろうかが疑問。饒舌で大風呂敷なところはあるが、入門書としてはピンカーの方をお勧めする。まあ名前が大きすぎるわりにぜんぜん知られていないチョムスキー言語学について学んだことの言い訳としての一冊とでもするか・・・。
taninen氏のまとめにもあるが、「生成文法がいまだ科学と呼ぶに値するだけの基盤を築くに至っていない」ことをこの本はやたらと強調するんだけど、そこまでの実証性って本当に必要なの?っていうのが素直な感想。ピンカーの本なんか読んでると、生成文法のその辺の曖昧さも認知脳科学とかの新たな発見とかで解決するような展望を抱いているみたいのだが、言語学を言葉という現象の上だけで捉えて実証的な科学として成り立たそうっていう方針自体が無理なんじゃないかって思ってしまう。だから、生成文法も含めて現代の言語学の知見を様々な分野で利用するという意味ではやっぱりチョムスキー以降の言語学はかなり有用だし、それはそれでいいって思うんですが。


文化の社会学
佐藤 健二 吉見 俊哉
4641122423

これもhttp://d.hatena.ne.jp/smasuda/20070308で紹介されていたことと、ポピュラー音楽研究と自称しながらもぜんぜん最近社会学の本を読んでいなかったので、その辺をヴァージョンアップするために読んだ。増田さんのおっしゃるとおり「1、2章の学説整理のアップデートっぷりにきょうびの『文化社会学的言説のコモンセンス』を感じるところ多し」であり、カルスタとかが流行(台風?)として去っていったあとに咲く花のようにひっそりとではあるが堅実な好論文が多く、初学者にもうってつけであった。
特に3章「住居」、6章「テレビCM」、8章「ネット文化」あたりは日ごろから接していたものに関する認識を改めさせるような印象深い知見に満ちていた(8章に関しては自分が如何に2chというものを知らないかを思い知らされた!)。
例えば

フランスの伝統的な考えでは、みだりに水に触れること、ましてや身体を水に浸すことはタブーとされていた。(中略)誕生、結婚、死といった人生の大きな「移行」の局面でのみ、全身入浴は認められた。
第3章、62-63ページ

や、それに続く「洗濯」という行為のドメスティケーションなどの「習慣による抵抗と感覚の再編成」に関して。
最近、読んでいたピンカーの本などでは、ともすれば「汚れ」といった文化的な習慣も行動進化論的な説明によって解決をしてしまおうとするが、以上のような文化的な感覚をうまく捉えきれていない。やはり社会学が生物固体としてのヒトというレベルを超えた次元で、文化を取り扱おうとする意味は今日でも確かにあるのだ、と強く自らを納得させたのであった。
5章「音楽」、7章「マンガ同人誌」など自分の研究と重なる問題について言いたいこともいろいろあるが、それは別な機会にする。最後に1つ書いておくことにすると、自分の研究で「ポピュラー音楽的素養」と呼んでいるものを、文化の社会学的視点で眺めるならば「リテラシー」と呼ぶことができることを発見した。まあ当然といえば、当然だけど、その辺のすり合わせをうまくするのが自分の役目かなと考えながらこれからも社会学系の議論を見ていこうかなと思う次第である。