勉強ってわけじゃないけど、ただの読書、久しぶり純粋な読書。

木のぼり男爵
イタロ カルヴィーノ Italo Calvino 米川 良夫
456007111X

読了。カルヴィーノは高校のときに教師に勧められて以来、愛読している気がする。小説とかほとんど読まない自分にとって異例なことだ。気がつけば5、6冊、彼の本を所有していることになる。
これは一番の代表作といっていい空想歴史小説。『我々の祖先』とされた三部作の一部で寓話的な話だ。
イタリアの貴族の息子が家での厳しい躾に反抗して一生を木の上で生活するという荒唐無稽、奇想天外なストーリーだ。だがそこから語られるのは人間の文明のあほらしさと素晴らしさであったりする。『クラリッサ』にハマって盗賊業から離れる荒草のジャンとか、トルストイの小説のキャラクターが出てきたり、細かな文学ネタも絡ませつつ、イタリアの大きな自然の元で語られる18世紀後半から19世紀へいたる啓蒙主義と革命の一大叙事詩なのである。