はてなダイアリーが選ぶ名盤百選

えー前々から予告しといた通りモーフィンを紹介します。多くの人に音楽を紹介すること自体初めてで、一回限りしかチャンスがないので、もうこれは文脈やら周りの雰囲気とか度外視して本当に自分の大好きなものを選ぶしかないと思ってこういうセレクトになりました。


自分の好きなものを一般的なジャンルという枠から外したとき出てくるキーワードはビートである。もちろんケルアック、ギンズバーグも好きだが、例えばNYパンクやトム・ウェイツやノーウェーブ、ジム・ジャームッシュポール・オースターといったものも自分の中ではビートに位置付けられる。そして今回紹介するモーフィンこそまさしく音楽でビートというものを完璧体現したバンドだと思う。彼らの生き様、歌詞、サウンドすべてが体現していると思う。

オルタナティブ・ロックの先駆的都市であるボストン出身の彼らがデビューしたのは92年。ちょうどグランジの嵐が吹き荒れてたころで、彼らもアメリカのオルタナ系ロックとして紹介されていたと思う。しかし、デビュー時、既にメンバーの年齢が30歳を越えていたことからわかるとおり、所謂オルタナの新進気鋭のバンドではなく、何年もインディー時代の辛苦を舐めてきたベテランバンドっといえる。
前身となったマサチューセッツのバンド、トリート・ハー・ライトでギタリスト/ボーカリストであったマーク・サンドマンが、サックスのデイナ・コリー、ドラマーのジェローム・デュプリーを誘いモーフィンを結成。このときのマークの楽器はなんと1弦スライドベース!マークが言うには、たまたまデイナとセッションしてたときベースをボトルネックで弾くとサックスの低い音と妙に合うからこのバンドを思いついたが、めんどくさいので1弦にしたとのこと。
92年に『グッド』、93年『キュア・フォー・ペイン』を発表した所、ドラマーがトリート・ハー・ライト時代のビリー・コンウェイに変わり、マークも弦を一本増やしてモーフィンのサックス、ドラム、2弦ベースというスタイルが確立される。
このなんとも奇妙なバンド編成とその低音*1のグルーブを強調することから、彼らのサウンドはロウロックという名前で呼ばれていたが、全くフォロワ―を生むことがなかったほど孤高の存在である。*2基本的にはベースが主導の本当にシンプルな楽曲なのだが、マークのルー・リード似の激シブの低音ボイスと、4ビートではないがジャズっぽいビリーのドラム、間奏部のソロでグイグイ引っ張るデイナのサックスがあわさり、さらにはマークの素晴らしい歌詞の世界が絡むと、聴く者の頭の中にゆっくりとモルヒネが注入される気分。
どのアルバムも良いのだが、今回紹介するアルバムは97年4作目の『ライク・スイミング』である。基本的なものは変わってないが、この40分という短いアルバムはサウンド、歌詞、ジャケットの全てが統一されており、スタジオの作品の中ではモーフィンの世界が一番堪能できると思う。
このアルバムを最後にマークは、あまりにもできすぎた話だが、99年ローマでのライブ中に心臓麻痺で死んでしまう。遺作として、最後のオリジナルアルバム『ナイト』とライブ盤『ブートレッグ・デトロイト』を遺したが、本当にできすぎた映画のような人生であるので、どこかで生きてるんじゃないかと思うほどである。
しかし、ライブ盤を聴けば聴くほど、もうモーフィンのライブを聴けないことが残念で仕方がない。さらに周りに彼らについて話す人も少ないのが残念である。カルトと呼ぶにはメジャーであり、メジャーというにはマニアックな彼らの音はこのまま忘れ去るのには惜しすぎるものである。だから、この機会に皆様に聴いていただけることができれば幸いです。以上

都合が悪いみたいので
id:ragamuffinさんに回します。よろしくお願いします。


追記:遺されたメンバーのデイナとビリーはtwinemenというバンドを地道にやってる様子。
http://www.twinemen.com/
さらに亡くなったマークの意志を引き継ぐ形でマーク・サンドマン音楽教育基金なるものが作られた。
http://www.morphine3.com/n_index.html

*1:サックスはバリトンもしくはアルトに、そして二本いっぺんに加えるダブル?サックスを使用。ドラムもバリトンにチューニングされている。

*2:ロレッタセコハンは似たようだがだいぶ違う。ダブル?サックスもしてたけどモーフィンに言及してないな。