仕事の都合上の読書

まあ趣味的にもありといえばありなんだが。。。
証言! 日本のロック70’s ニューロック/ハードロック/プログレッシヴロック編 (単行本)
難波 弘之 井上 貴子
4903951154

証言!日本のロック70’s Vol.2 ニューミュージック~パンク・ロック編
難波 弘之 井上 貴子
4903951251

井上貴子先生が中心となって新橋のライブバーZZというところで「70年代日本のロックを語ろう」と題するトークショーをまとめた本。レギュラーが難波弘之PANTA、ダディ竹千代というアーティストたちと井上先生、毎回のゲストを以下にまとめてみる。

めちゃくちゃ豪華やねん(笑)。とはいうもの、今の若者にとって個人名でわかるのは、鈴木慶一、鮎川誠、遠藤ミチロウくらいだから、バンド名を書くと、一風堂BOWWOW四人囃子、フラワートラベリンバンドとかです。まあそもそもPANTAがレギュラーでロックについていろいろ語るってだけでスゴイことだよね。
ということで、「日本のロック」ファンにとっては垂涎のイベントであることは確かだし、いろいろと面白い話、証言が出てくる。そのいちいちを書く余裕はないので全体の印象をザックリと。
と、ほめながらこき下ろすのもなんだけど(笑)、正直、全然、共感できない!というか、この本に出てくる「日本のロック」と自分の頭にある「日本のロック」がこれほど違うことにびっくりした。しかも、そのズレた認識を「近頃の若いものは…」形式で描いているところが散見され、すごく不愉快(笑)。しかも、本に出てくる日本のロックをいろいろ聞いてみるが、そこまでピンとくるものはほとんどない!つまり、俺はニュー・ロックとか興味ねえよってことなんですが(頭脳警察、外道、四人囃子あたりは好きなんだけど)、もうちょっと冷静に書いてみるか。。
まあ企画が「70年代のロック」だからしょうが無いにせよ、この本で念頭に置かれているのは60年代後半から70年代前半にカウンターカルチャーの思想とヒッピーの匂い共に輸入されたロックでしかなくて、それ以降のパンク、メタルなどのロックのサブジャンルの影響を感じさせるものが極端に少ないんだよ。一応、遠藤ミチロウを呼んでいるけど、これ読めば分かるけど、ミチロウはあんまりロックのサブジャンルとしてのパンクをやっているつもりそれほどないんだよね。音楽性からも伺えるけど、彼の特徴はプロテストなアティチュードの音楽であって、むしろフォークっぽい。
逆に言えば、自分の描くロックの歴史がパンク経由のものであることをはっきりと認識した次第(より詳しく言えばプロトパンク-NYパンク-UKパンク/ニュー・ウェイヴ-USオルタナティブ/ハードコア/インディー-日本のオルタナティブロック)。だから、いくらロックの特徴がシャッフルビート、バック・ビートやブルーズ進行やらリフとか言われても、そういうのに抵抗したくてやってきたからピンとこないの当たり前なんだよな。もちろん抵抗の相手はプログレだったり、ロックンロールだったり、70年代のハードロックだったりするから、パンク経由のオルタナティブなロックもいろいろあるんだけど、そういうジャンルコードに対する繊細さを見落として、「ロックの身体性」が足りないと(近頃の若者は)と言われるのはキレますね(笑)。
例えば、ニルヴァーナを語るときにブルーズがどうのとかシャッフルがどうのとか意味ないと思う。もっと言えば、パンク/ハードコア以降のロックを考えるとき、リフ対コードという二元論は成り立たないと思う。だってSmells Like Teen Spiritのギターはどっちなんだよって思うでしょ?あれ一応コードによるバッキングとも言えるけど、あの曲を例にするときは「ジャージャジャン、ジャジャジャ」とあの「リフ」を口ずさむ。それにコードとみなしても、メロディーと和音の関係にあんまりない。もちろん、あの曲を楽曲分析で説明することは可能だけど、基本的にパンク/ハードコアの楽曲はパワーコードを好きなところつなげりゃいいし、それがコードバッキングとして響くか、リフとして響くかはどっちだっていいんだよ。
まあ、こんだけ言ってもこの本の価値はぜんぜん落ちないほど、貴重な本であるし、この企画が続けば彼らの日本のロック史の認識に対抗的な言説も出てくると思う。なんか死にそうな順番で呼んでるらしいから(笑)、まだまだ若いミュージシャンの登場はないと思うけど、是非とも継続を期待する。むしろ、俺いつか呼ばれないかな(笑)、アマチュアだし、PANTAさんと喧嘩になりそうだけどね(いやむしろ井上先生と喧嘩になるかw)。