読書

これ生協でうろついて見つけてかった。
西洋美学史
小田部 胤久
4130120581

小田部先生の最新著書である。教科書といっても良い出来であり、日本語で読める美学入門書が増えたことは喜ばしい。
内容はプラトンアリストテレスからハイデガーダントーに至るまでの思想家の美学を小田部先生の興味関心によりピックアップして紹介するとともに、それが与えた影響を考察するもの。出てくる思想家はギリシア古典期から中世、啓蒙期、19世紀というふうに新しいものではないが、そのトッピクは常にアクチュアルなものである。この辺のセンスはさすが小田部先生であり、しかっりとした思想史研究でありながら現代的な関心にこたえるものだ。もちろんただの学史解説ではなく、随所に小田部先生の意見、主張が入っている。このスタイルは佐々木先生の『美学辞典』と一緒だが、『美学辞典』と違い思想の解説と小田部先生の意見が並列に入っているので、発展的な学習にはその辺をうまくかぎ分ける必要がある。章末ごとに付けられる参考文献もなかなかおもしろいセレクトがされている。
さてことあるごとにツイッターでアートうぜぇというつぶやきを投げている私だが、この「アートうぜぇ」というつぶやきは批判的な美学史を再構築するための視座として成り立つので、この本を参考に「アートうぜぇ」史を書きたいとおもっている。プラトンの詩人追放論から、ヘーゲルの芸術の終焉論、ヒトラーの退廃芸術論、アドルノホロコーストと詩などけっこういけそうで面白い。