またもや催促に追われ

読むペースが追いついてない。。ささっとメモ。
日本のヒップホップ―文化グローバリゼーションの〈現場〉
イアン・コンドリー 上野 俊哉
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おそらく日本のヒップホップに関する今のところ一番、しっかりとした学術書であり、エスノグラフィー的な記述である。というか、イアン・コンドリーは日本のヒップホップ・シーンの参与観察を超えた活動を行っているのでヘッズにはもう有名な人だ。ウィークエンド・シャッフルに出てるし。今はオタクの研究しているらしい。そのうちどこかで会えることを期待している。
さて内容は多岐にわたるのでここでは紹介しきれない。問題関心自体は前に紹介した木本礼一の著作と同じものであり(参照:http://d.hatena.ne.jp/shinimai/20100605/p1)、いかにNYのローカルな文化であったヒップホップが日本に根付くかを議論したものである。両者を比較するならば、コンドリーは〈現場〉という概念によってグローバリゼーションを捉えようとしたところにある。〈現場〉という言葉は非常に日常的なものであるとともに、サブカルチャーの言説としても非常によく流通しているものである。もちろん、ライムスターのリリックも踏まえてのことである。
既存の音楽産業の構造の説明と、アーティスト、ファン、レコード会社の人々などをつなぐ媒介として機能する概念として〈現場〉は非常に有用な気もしたが、一方でその意味するところは曖昧であった。〈現場〉を定義するという項もあったのだが、どこが定義なのかよくわからなかった。
そのような問題点を含みながらも、日本のヒップホップ・シーンの形成について学ぶには非常にためになる本であることは間違いない。しかしながら、このような本が成功しているのはコンドリーが外国人であるというところに非常に強く負うのではないかと思われる。さらに参与観察とそのエスノグラフィーの記述において、良きにつけ悪しきにつけ彼の活動は学者の立場を超えてでたものとなっている。おそらくコンドリーがいなかったら日本のヒップホップ・シーンは今のものとは異なっていたようにさえ思える。