最近の読書

実際に読んだものとは前後します。
セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史 (ソフトバンク新書)
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最近の文芸批評の動向を掴みたくて読んだ。あんまり文芸批評とかそんなに興味ないけど、最近、一つ自分で批評書いてみようかなって思ったので、軽くリサーチ。そういうえば前はなんかゼロ年代のなんたらについて書けといわれたので宇野常寛の『ゼロ年代の想像力』とかもいちおう読んでる。いやーあれは読むのつらかったな。
でこのセカイ系の本だけで、非常に良くまとまって、セカイ系をまつわる言説を知るには参考にはなった。セカイ系をポスト・エヴァンゲリオンの物語として捉えて、それがネットの批評、文芸の批評と広がっていく様子を丁寧に追っている。そこから宇野の決断主義vsセカイ系という対立の構図がでて、今にいたるというわけだ。
個人的にウケたのは「アスカは萌えるし、リアルな戦争はカッコイイのである」(209)という前島氏の本音が漏れたところ。よくよく考えれば、単なるエンターテイメントに対してジェンダ/セクシャリティの観点や戦争や平和という戦争問題でつっこむことは、本来なら余計なお世話である。だが文芸批評は自らの独自性を打ち出すために、そういった純文学以外の作品を持ち出してあーだこーだ言ってきたわけだ。まあそういう他の文脈を持ち出して物事を語ることは別にいいと思う(ただし、そういう批評は文芸批評の形をかりながら、世の中に対する文句を言ってることが多くてネ・・・)。セカイ系をまつわる問題も基本的に、そんなとこかき混ぜなくてもというとこをかき混ぜたカンジだ。
ところで私がこのセカイ系の本の中で出てくる作品で好きなのを、どさくさにまぎれて書いとく。まず『ブギーポップは笑わない』。これは狭義のセカイ系には入らないと思うけど、まあ世界って言葉自体はよくでてくるね。ブギーポップが好きな理由の大半は、小説のナラティヴな技法によるところが大きいけど、独特な説教臭さも好きである。なんというか古きよきジュブナイルが持っていた説教臭さというか。ただブギーポップの独特なナラティヴと小説の構成、雰囲気はシリーズを繰り返すことによって無くなって行くのが残念。ただのバトルものになると面白くないんだよね。まあでも、最初の『ブギーポップは笑わない』は傑作と呼ぶべき小説だと思う(ちょっとマニアックだがアニメもいいよ)。
もう一つは、これは原作読んだことなくてアニメ版しか見てないんだけど『イリヤの空、UFOの夏』。これも少し説教臭いところがよい。あと前島氏の本にも書かれているとおり、この話自体セカイ系の批評となっているんだよね。あと、他のセカイ系と違うのはちゃんとした大人が登場する点だ。たしか宇野氏も惑星なんとかでイリヤは褒めてきたがする。UFO関連のマニアックな知識がちりばめられているあたりもおもしろい。アニメはオープニングの曲が非常にいいと思う。アニソンクラシックにすべき。

ブギーポップのオープニングも秀逸だからあげとおく。これもアニソンクラシックにすべきなんだが、スガシカオだから、アニソンと呼ぶべきなのか分からないww