最近の(趣味の)読書

ブログを更新しないのもさみしいので、メモ程度に。
ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))
上遠野 浩平
4840208042

ラノベ入門として最適だった一冊。というかこれくらいの電撃文庫は今で言うラノベというよりも、要するにジュブナイルだ。変な意味でのゲームっぽさやアニメっぽさは少なく、単に子どもが読むエンタメ小説って感じである。
私はラノベとかほとんど読まないけど(ハルヒは最初のだけ読んだ)、「ブギーポップは笑わない」のアニメ版を見て(アニメはかなりすばらしい出来でこれはまた話すことにする)、原作にも興味を持った。まあハルヒもそうだけど、アニメから原作という道は結構ある。ハルヒ京アニの再現っぷりに感嘆しつつも、別に原作読まなくてもいいやって思ってやめたけど、ブギーポップは小説としてもかなりよく出来ていると思った。というか、ラノベにそんなに慣れてない人でも読めるというか。具体的には、1ラノベ特有のクリシェ的なキャラが出てこない、2文章が簡潔で変な彩色が少ない、ことなどがあげられる。
昨今のラノベってのは、キャラクターが先行で(ツンデレとか)、描写がマンガ的だったり、一種異様な文学形式だ。もちろんそういう独特な文化も面白いんだけど、普通の小説を読みなれている人からすると、本当に萎えるというかノメリこむことが困難だ。それに比べ上遠野浩平の文章は、多少拙いとこもあったけど、全体として簡潔で抑制が効いている。特に賞賛すべきなのは、プロットの展開であり、大胆な倒叙法が用いられている。「笑わない」では1つの事件を巡る多数の登場人物からの証言によって構成されているが、後日譚的な部分が事件の記述より前の章につづられている。その後日譚は「なにやら不気味な出来事があった」という漠然としたものなんだが、その後に出来事のあらましが記述されるので、読者としては腑に落ちる。
これって何かに似ているなー、と考えたところ、ちょうどタランティーノの「パルプ・フィクション」だった。「パルプ・フィクション」では主要な事件が最後に描写されるのだが、その事件の後に主人公が死んでしまうという出来事があり、その主人公のシーンが倒叙的に先に描写される。見ている側としては、最後の心温まるシーンでそれなりのカタルシスが得られるんだけど、主人公の目線に立ってよくよく考えると「コイツ、その後死んでるだよなw」という不思議な感覚がある。これはなんというか、物語の内容がすべて描写されているというよりも、描写されている以上の物語が存在することを暗に伝える良いメソッドなんだけど、それと同じ方法をブギーポップは使用しているんだなっと思った。
なんかごちゃごちゃと分かりにくくなったけど、「ブギーポップは笑わない」はラノベ読み以外にもオススメする一冊です。お話の内容もさることながら、上遠野浩平ははっきりとしたメッセージや主張を持っていることも、一般の読書家にとって意味あることだろう。90年代における「学校」という場所について考察するための資料にもなる。そのうち学園物というジャンルについてもう少し考えてみるが。
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クエンティン・タランティーノ
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