Questions and answers, honesty, lies. Yes, no, you can't, but you can if you just try

ウェブで絶賛(?)のこの本を読んだよ。しかし新書700円って高くないか。1日以内で読める本に500円以上払う気にならんのですよ、最近は。
自分探しが止まらない (ソフトバンク新書 64)
速水 健朗
4797344997

正直言わせてもらせるえると、前のタイアップのほうがよかったなと思う。資料的な価値があるとはいえ、前作のタイアップの歌謡曲の歴史と違って、「自分探し」というカテゴライズは非常に恣意的であるからだ。さらに著者自身の屈折した思いが表出していて、なんというかすっきりしない印象(まあある程度実存的な問題に関わるから仕方ないけど)。
ともかく何よりの問題点は「自分探し」なる観念が反証不可能であることだ。自分探しをしていないと胸を張って言える人などいるのだろうか?というか、自分探しをしていないっていう状態がわからない。社会の一部の生産ラインで淡々と働くことなのか、家庭を持って幸せに暮らすことなのか。その辺がはっきりしないために、この本で触れられている事例は非常にざっくりとした若者文化論とでも呼ぶしかなく、共通点、類似点を見出すのが非常に難しいだろう。
さらに言うと、自己啓発とかの起源としての「ニューソート」とかの思想と現代の自己啓発本の関係がそこまで明らかに書かれていない。本当にルーツと言ってよいのか良くわからない(まあ起源を求めるという行為自体の実証性の無さに由来することもあるが)。あと重箱の隅をつつくようだが、60年代のカウンターカルチャーやヒッピーの思想に触れているが、50年代のビート・カルチャーに一つも触れていないのは不思議だ。「深夜特急」とかのバックパッカー文学の元祖は明らかに、ビートであると思うのだが。
その点に関してだけど、僕はケルアックやギンズバークが好きだからミクシのビート・コミュに入っていたのだけど、「ロハス」という言葉が流行りだしたときに、このコミュの中で論争が起こった。「ロハス」を擁護する人たちは、「ついにビート的な生活が現代社会において認められた!」と主張し、それを批判する人たちは、「いやビートはロハスなんかと違う!」と非常に微笑ましい光景(笑)が散見され、思わずコミュから退会したような気がする。
最終的な解答のようなもんは無くてもいいと思うんだけど、なんというかポジションが定まらない位置で「自分探し」という観念を追いかけっこしている印象があることは否めない。これ以上の議論をするには、やはり経済学とか社会学とかの専門領域に訴える他ないのかなと思った。一方では、経済的な構造のせいで非正規雇用の若者が増えたという下部構造的な問題が述べられ、もう一方では、「自分探し」というイデオロギーにつられて消費社会から逃走しつつも消費社会に巻き込まれるという上部構造があるといえる。これら両方をいっぺんに片付けることは無理やから、どっちかに限定してい議論すべきなんやと思うけどね。
あとロック・カルチャーの中にはザッパのようなヒッピーに批判的だった人がいたり、パンクの中には「ネヴァー・トラスト・ア・ヒッピー」という標語があったことも忘れないでほしい。確かにパンクにせよロックにせよ、「自分探し」的なイデオロギーがあることは間違いない。
例えばsham69の‘Questions and Answers’

俺らは生まれすぐに
言うこと、やること押し付けらている
でもダチ公だけがおまえ、まさにおまえを知っている
だから良く考えてみろ、やつらが言うことをやるまえに
これはおまえの人生だ、だからおまえの道を行け
問題と解答、正直、嘘
そうだ、ちがう、おまえはできない
でもよ、おまえがやろうとすればできるよ。
As soon as we are born
We're told what to say and do
But only a friend can know the you thats you
So think before you do what they say
It's your life so go your own way
Questions and answers, honesty, lies
Yes, no, you can't,
but you can if you just try

確かに言っていることは「自分探し」。だけど僕にとってパンク・スピリットが消えないのは、良きパンクスが常にthink「考える」ことを訴えているからだ。日本の若者文化に足りないのはたぶんこの「考える」精神だと思うね。
まさにThink again

ベスト・オブ・シャム69
シャム 69
B0000566HT

Complete Discography
Minor Threat
B000000JO3