研究生活カイゼン!プロジェクト第1回-Searchについて

このプロジェクトの概要については以下を参照。
http://d.hatena.ne.jp/shinimai/20071217/p1
さて今回は研究におけるimputの第重要事項であるSearchについて取り扱う。Searchとはつまり、研究において業績をあげるために必要な検索や情報収集である。これは大局的には二つの目的の混合である。我々の研究生活においては、そもそも常に抱えている研究関心を持つための情報収集と、あるテーマが定まった後に論文を書くための情報収集がある。これら二つのことは非常に異なることかもしれないが、今回はそれにこだわらず、研究のための情報収集をいかにするべきかを問うことにする。
id:tanakax曰く、「ある学問分野に精通することは、ある音楽ジャンルに精通することに似ている」と。確かにそうであろう。ということは、「ある学問分野に精通する」ために必要な情報収集とは、ある音楽ジャンルに精通することに似ていることになる。私は少なくともロックに関しては一般の人よりも精通している。なぜ私はロックに精通するようになったかを考えれば、おのずと「ある学問分野に精通する」方法も分かるのではないだろうか?つまり、我々はCDを買い、知人から勧められて、雑誌やTVからの情報を得て、ある音楽ジャンルに精通したといえる。他の人は自分が精通していると考える趣味において考えてみれば良い。アニメでも漫画でもいい。ある趣味に精通するために、我々がやってることはほとんど同じであるから。
以上の考察によって、ある学問分野に精通するために必要な情報収集活動は以下のようにまとめられると思われる。

  1. 人に教えてもらう
  2. 文献から文献へ
  3. 研究者を追う
  4. 雑誌に目を通す
  5. データベース検索

果たしてこの分類がエレガントであるのかは分からない。しかし、おおむね我々の情報収集活動はこれに収まるものだろう。
初学者、つまりその学問分野に精通していないものが、まず第一に行うべきことは1である。スティーヴン・ピンカーは「私がある専門分野について論文を読まなければならないことになったら、データベースを検索するのではなく、まず第一にその専門分野の知人にメールを出す」と何かで書いていた。コンピュータの機械的な情報検索には人間の知能は適わないが、ヒューリスティックな情報検索において、人に勝るものは未だかつて無い。初学者がデータベースを検索しても、どれが重要な情報か峻別することはできないが、人間はその情報に重要性を負荷することができる。だから、学問でも趣味でも何事かに精通するための王道は、その分野の精通したる人に教えを請うことである。
もちろん、人に教えてもらうためには、その人を知っていて、なおかつ友好関係を築いていなければならない。本来、学問とは共同作業だと思うので、この辺は各自周りの人間と協力できるようにしているべきである。情報に関して互恵的な関係を築かなければならない。つまり、ある専門分野について人に尋ねるのと同様に、自らの専門分野について尋ねられたならば、親切に答えるべきである。以上、1に関して具体的なことは、ともかくメールアドレスを管理して、人について詳しくなることとしか言いようがない。自らの無知を恥じることなく、人に教えを請わなければならない。
さて次に2である。これは一般的にはある文献を読んでいるとき、そこで言及される文献をさらに遡って読むことである。あるCDを聞いて、そのミュージシャンが影響を受けたと思われるミュージシャンを遡って聞くことに相応する。しかしながら、この活動はどこまで遡ればいいのかは、カンとしか言いようがない。言及された文献にもさらなる文献が言及されるだろう。そのように延々と遡っていけば、いずれほとんどの研究者はギリシア哲学を学ぶはめになる。そのような事態を回避するためにも、1は重要であり、情報に重要性を負荷する必要がある。
3は大局的な研究生活において、追っていく研究者をまとめる必要がある。これも2と同じく基本的には際限がないので、ある程度ヒューリスティックな判断をする必要がある。とりあえず自分の専門分野のビッグネームと思われる研究者について、ある程度調べておく必要がある。私は研究者の名前をグーグルで検索して、ウェブサイトが発見されれば、はてなブックマークにおいて補足している。もちろんすべての研究者が自らのサイトを運営しているわけではないが、ここ最近の英米系研究者結構、サイトを運営していて、場合によっては論文草稿を公開している。追っていく研究者についてどこまで知っておくべきなのだろうか?まさか血液型や星座まで知っておく必要はない。id:tanakax研究者の出身大学と現在の所在地を把握しているという。そこまですべきかどうか私は分からない。
4も同様に補足する雑誌を決定する必要がある。そして、その雑誌の方針、文脈などを知る必要がある。これもウェブサイトがあるなら便利であり、ブクマにて補足するとなお良い。さらに現代では論文の目次などの情報をRSSで配信している場合さえあるので、RSSによって情報を取得すればこんなに便利なことはない。
5は自明であろう。誰だってやっていることだが、あるトピックや人物について興味を持ったらまず検索することが肝要である。しかしながら、データベースには向き不向きがあるので、どのようなデータベース検索が適当なのかはこれまたヒューリスティックな判断による。もちろん最初はグーグルに頼るのも良いだろう。重要なことはどのようなデータベースがあり、どのような検索方法があるのか、我々は事前に十分に知っておく必要があるのだ。


以上が我々に必要なSearch活動の概要である。具体的なツールとしておそらくRSSリーダーの導入が望ましいと思われる。それについてはまた今度扱う。今回は私とid:tanakaxで、共通する学問分野に関してチェックすべき項目を以下にリストアップしておく。人文哲学系の人間には適合するところは多いだろうが、各個人で自らチェックすべき項目をまとめるべきであろう。

大体以上である。
今後の課題として、大学の図書館の機能について詳しく知る、電子ジャーナルについて詳しく知ることが必要である。そのために図書館の情報処理の講習会とか、東京大学情報基盤センターの講習会とかに、積極的に参加すべきである。場合によっては司書の方や情報処理の専門の方と知り合いになったほうが良いかも知れぬ。

*1:詳しい使い方についてはhttp://arcadissima.cool.ne.jp/karimono/How_to_Perseus.htmを参照