最近のリスニング

音楽関係の論文に出てくるものに引っ張られてそっち方向にリスニングが偏った。まあこういう研究していると趣味と研究の差が分からなくなるのは仕方ない。
Pop Art - The Hits
Pet Shop Boys
B0000EWNMY

まずはペット・ショップ・ボーイズのベスト。ポピュラー音楽学関係の論文でかなり言及されることが多い彼らであるが、何がすごいのかよく分からんかったけど、いろいろと調べたり聞いたりしてやっと分かった。まあ要するにこれまでのポピュラー音楽への批評性が高いってことだと思うんだけど、以下のエルビスの曲のクイアなカヴァーとかを見ると、ペット・ショップ・ボーイズって音楽のヤオイなんじゃないか、って思ってしまう。

私はダンス・ミュージックには詳しくないので、その辺の革新性とかは分からないけど、コレを原曲との違いを分析すると、コーラスからヴァースにかけてドミナント解決がサブドミナント解決に変更されている。サブドミナント解決は一般に西洋音楽的に女性的と言われることを考えると、この変更がかなり意図的であることが予想されるだろう。つまり、PSBは極めてヘテロセクシャル的なラブ・バラードであるエルビスの曲を、クイアなイメージに置き換えているように思える。その他、PVも含めて、PSBは音楽批評とかの側面で言及できるところが多いんで、サイモン・フリスやなんかが持ち上げるのは理解ができる。しかし、ポピュラー音楽として優れているかどうかはちょっと分からなー。まあポップでありながら、複雑な意図を予想してしまうっていう意味ではまさにポップ・アートなんだけど。
その他では、この曲が非常に良く、なおかつ、意味深。昔のディスコ文化へのオマージュらしい。

次はジミヘンのライブ版。
No More a Rolling Stone: Live at Monterey Pop 1967
Jimi Hendrix
B0001XQD7U

ある種のポピュラー音楽学(カルスタ、ポスコロ系)において、「二重意識」とか「シグニファイイン」といった用語とともに言及されるのは、圧倒的にジミヘンである。というか、いつもジミヘンでそれ以外にネタないんかいって思うくらいジミヘンで、確かにこの67年のモントレー・ポップ・フェスティバルでの演奏はマジでかっこいいんだが。しかしながら、それを「二重意識」とか「シグニファイイン」とかで語る意味がよく分からんよー、まあデュランのライク・ア・ローリング・ストーンとかのカヴァーは面白いんだけど、ジミ的にはただ好きだからやりましたってカンジじゃないのか。
一番かっこいいのはやっぱ最初のキリング・フロアー。

最後はエミネムのベスト。
Curtain Call: The Hits
Eminem
B000BVD460

これまたポピュラー音楽学関係の論文で、現代で一番言及されやすいミュージシャンの一人がエミネム。スリム・シェイディーという架空のパーソナリティを武器に、エミネムっていう人はアフリカン・アメリカンの二重意識を、自らの音楽表現にうまく取り入れているとか、言えそうになくもない。そして、その二重意識は、彼の性差別的なリリックへの批判をかわすことに利用されているような気がするので、なかなか政治的に複雑ではあるが。
ともあれ、初期のエミネムのトラックはかっこいいですね。ファンキーだし。しかし、なんというか売れるとともに、どんどんリリカルなバック・トラックにアダルトチルドレン的な苦悩を歌うパターンになっているのがなんちゅーかベタ。マイナーで叙情的だと売れやすいことは分かるんだけど、初期のガキがふざけているカンジの方が好みだよなー。これとかオルガンのリフが最高にファンキーでよい。