ロックの録音の良さ悪さと好きなライブ版とレコードにおける作品の存在論についてとか

たまたまツイターでしてた話やけど
ライブ&アンリリースド(LIVE&UNRELEASED)
ブルー・チアー(BLUE CHEER)
B000H7I634

ライブ版だから仕方ないと思っても、いくらなんでもヒドイ音質。しかし、だからこそなのかブルー・チアーの迫力がよく判る。1曲目のサマータイム・ブルーズからしてすごいテンションだ。にしても、各曲で音量の調節を強いられるのは普通に手に入るCDのレベルとしてどうかしている。それでもコレを聞き続けるのは、演奏と曲の良さだろう。これはもっと良い録音があったら聞いてみたい。
頭脳警察’73 10.20 日比谷野音
頭脳警察
B00005LJQ3

これもヒドい音質のライブだけど、頭脳警察でいまんとこナンバーワンのアルバム。というのも、バックの演奏が四人囃子なんである。「前衛劇団モーター・プール」などの曲は、プログレ色が一番強い『頭脳警察3』の曲をオリジナルのアルバムよりも忠実に再現しているとまでも言える演奏である。もちろん、当時の熱気みたいなのも伝わるけど、これももっと良い録音があったら聞いてみたい。この時代の日本でもっともかっこよかったライブの一つといっても間違いないだろう。
と、昔のライブ版は総じてヒドイんだけど(ジャズとかの録音はまともなのはPAの発達の問題か?)、それでもこれらを聞くのは、その後ろにある演奏とか作曲構造とか当時の夢とかに思いを馳せるからなんだろうと思う。つまり、その後ろにある何かを求める、ロマン主義的なレコード作品観のようなもんか。
でも、例えば
From the Muddy Banks of the Wishkah
Nirvana
B000000OVZ

なんかは自分の思い入れが多分にあるんだろうけど(なんたって最初に買ったニルヴァーナのアルバムだし)、その後ろに何かがある以上に「この録音の音」が素晴らしいと思うライブ版なんだよな。はっきり言って他のオリジナルよりもこっちの方が「本物」のニルヴァーナの音楽だと思ってしまう。でも実際のところコレ、ブッチ・ヴィグとアンディ・ウォレスによって巧みにポスト・プロダクションされたライブ版なんだよなー。やー久しぶり聴いてもかっこいい録音(編集)だは。
ライヴ・アルバム 〜サッポロ OMOIDE IN MY HEAD 状態
ナンバーガール
B00007FOX7

これなんかも、ライブとして以上にこの録音自体がすごく良い。ナンバーガールはその後のライブ・アルバムラッシュから分かるとおり、おそらくほとんどのライブを録音することを前提としてやっていた感があるから、いろんなバランスも適切に設定されているように思われる。そして、観客の声をうまく入れることで臨場感も増すからなお良し。
以上のことから、どうもロックファンはその「本物」らしさを主張するために、ロックの作品概念をライブ自体に焦点合わせたり、レコードのレベルに合わせたりして、正当化するのが得意らしい(笑)。始めにがっちりした「作品の存在論」があるのではなく、その美的正統性を保証するために事後的にその場しのぎの「存在論」を作っているように思われる。実際に作品なんてどうでもいいからね。重要なのはロックだよ。そうロック(笑)
もちろん、時代的な意味での録音技術の向上やレコードに焼き付けられるサウンドへのフェティシズムのような問題もあるけど、あくまでも美的な意味での正統性が先にあると思う。要するにロックは形而上学を持たない(笑)。