ロックとパンクの間

パンク・ロック/ハードコア史
行川 和彦
4845613999

読了。初心に戻ってパンク/ハードコアに再入門!
この本のいいところは、アメリカ、イギリスと日本でのシーンのつながりを重視しているところと、音楽以外のパンク/ハードコアの思想面の話題をしっかり記述しているところ。さらにこれまでは軽視されがちなハードコアへのメタルの影響もしっかり押さえられている。
充実した内容で大変満足したが、全体を読んでみての感想としては、帯に書いてある「パンクやハードコアは断じてサブカルチャーではない。あくまでもカウンター・カルチャーである。」というのは心意気としては共感するけど、実はアンビバレントな表現じゃないかということ。ロックという音楽文化が稀有な存在であったのは、中流階級などが自らの下の階級に憧れるというような文化的価値観の反転であったと言われる。そしてそれは60年代という特殊な時代のもとに世界的な若者世代の共同幻想を生み出したわけであり、それがいわゆる狭義のカウンター・カルチャーだと思う。そしてパンク/ハードコアはそのロックに対するカウンターというスタンスが基本であるわけであるから、狭義のカウンター・カルチャーが持っていた価値観にさらに反抗することになる。そういう姿勢は「ネヴァー・トラスト・ア・ヒッピー」という言葉や「ストレート・エッジ」という生き方にも表れている。つまり、パンクやハードコアというのはロックにあった基本的な価値観を継承しながら、その文脈にあるものを取り除くことにより純化したロックというわけだ。その意味で「パンクやハードコアは断じて(狭義の)カウンター・カルチャーではない。」ということも可能である思う。