偶然見た映画が結構よかったりして

チャンス
ピーター・セラーズ ハル・アシュビー シャーリー・マクレーン
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を見た。特に知識は無かったけど、ピーター・セラーズシャーリー・マクレーンと役者が良いので見たが、かなり不思議な映画だった。
知的障害者と思われるチャンス(セラーズ)という名の謎の庭師が、偶然が続き大統領候補にまでなるという皮肉の利いたコメディなのだが、このコメディには突っ込みというものが存在せず、まるで我々の日常を淡々と描きながらもどこかおかしい雰囲気を醸し出すのである。セラーズの演技もピンク・パンサーのそれではなく、呆けていながらも落ち着いたという奇妙なものだ。
描かれるテーマ自体も実は一筋縄に行かない。基本的には、服装といった見かけの虚飾やTVでの発言といった表層だけで政治が動く、アメリカという国のアホラシサを痛烈に諷刺していながらも、人間という本質的な存在は何なのかということも扱っている。またそれと同時にチャンス氏が知的障害であることはテキスト上では明らかに明示されていないことと、ラストのシーンでキリストの隠喩から、彼が本当は愚者ではなく賢人であるという可能性も否定できないのである。
さらに淡々とした映像に合わさられる音楽のセレクトもかなりよかった。全編を通した不気味な感じをサティのピアノが盛り上げ、チャンス氏が街をさまようシーンをシュトラウスの「ツァラトウストラはかく語りき」をカバーするデオダートなど時代を感じさせるセレクトも。