パクリ、盗作、著作権侵害

いろいろな縁も含め興味をもっていたコレを買って読了。
「パクリ・盗作」スキャンダル読本 別冊宝島 1257
4796650725

ちょwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwwwwニュー評論家ってwwww
という突っ込みはさておき、一番よかったのは山口貴士弁護士のインタビューでした。なによりも「アイデア」と「創作性のある表現」の法律的な分け方を知ったのは大きい。これによれば川端康成の『雪国』の冒頭部分が、「国境」の「長いトンネル」を「抜けて」みたら、「そこ」は「雪がいっぱい」の「国」で「あった」という単なる「アイデア」を言っただけであればそれには著作権が存在しない。そうするとあらゆる言葉に著作権を認めなければいけないからである。そして基本的に「表現」と「アイデア」が1対1に結びつけらるものには「著作物性」無いそうだ。
この話を広げると日本の法律においてジョン・ケージの『4分33秒』の「アイデア」を盗んで違う演奏時間でやっても法律に触れないようにも思われるが、ここでの議論は非常に言語テキストの場合で行われているため幾分、音楽の場合ははっきりとしない。音楽の場合「アイデア」と「表現」を明確に区別できるんだろうか。
まあとにかくこの本を読んでの感想は、パクリと盗作、著作権侵害は違うということ、つまりはそれが「美学的」問題なのか、「倫理的」問題なのか、「法律的」問題なのかは分けて議論すべきであろうということだ。そして近年のヒステリックな「パクリ追求」の声が非常に危惧すべきなのは、それが「法律的」には著作権侵害にはあたらず、「倫理的」、「美学的」に悪い盗作やパクリといったものであるのにも関わらず、「法律的」制裁よりも重度な制裁が行われているからであろう。いくら明らかにそれが著作権侵害でも、罰金や損害賠償を課されることがあろうと、作家生命が絶たれることはあってはならないことに思えるからだ。なんというか現代社会は法律よりも倫理、道徳といったものに対する私的な制裁(=リンチ)が恐ろしくなっている気がして怖い。