Jポップ論の

暇つぶし的に買った

Jポップの心象風景 (文春新書)

Jポップの心象風景 (文春新書)

であるが、はっきりいって出来がよい!
というかこの人JASPMとかにこないのかな。まともなポピュラー音楽研究がないと嘆いていらっしゃる。というかすみますみませんってかんじだな。ポピュラー音楽学関係でも真っ向からJポップを論じたものは佐藤良明J-POP進化論―「ヨサホイ節」から「Automatic」へ (平凡社新書 (008))くらいしかないし。
佐藤氏が音階分析により、Jポップの人気を説明したが、烏賀陽氏はユング精神分析によりその人気を説明している。どちらも日本人の心性によって人気を説明しているのはなんともしがたいが、佐藤氏の説明がJポップをある音階に還元し、サウンドやリズムという要素を捨象してしまうのに比べ、烏賀陽氏の説明はアーティストのイメージ、歌詞からその日本的心性を明らかにするという包括的なもののため、素人にも理解しやすいし、より納得がいくと思われる。つまり佐藤氏の本はあくまでもアカデミックな作品分析からJポップの人気を探っているのに比べ、烏賀陽氏の本はジャーナリスティックな視点から書かれたその受容の分析によって説明がなされているわけだ。だからhttp://homepage3.nifty.com/MASUDA/ronbun/koizumi.htmlにあるような一般人と学者の現象の捉え方の不和はより少ないのではないだろか。
しかしJポップの話は最終的に日本人論に行き付くのは仕方ないといえども、やはりある種の胡散臭さを感じてしまう。でも烏賀陽氏もいってるとおり、世界的に見ても日本の音楽産業の自給自足率は他の国と比べて格別高いわけであるから、このような研究はまだまだ必要といえるだろう。なかでも1章のサザンオールスターズの人気を日本人のお盆の祖先霊祭礼信仰から説明するのは、とても説得的。なぜ日本人が夏の音楽にこだわるのか、という積年の悩みが氷解する思いであった。夏に温泉に浸かると『真夏の果実』を歌いたくなるという俺の性癖(笑)もここから説明がつくであろう。
結論だけ読むとロッキング・オン的な文章と大差はないし(ユーミンは巫女だ!、ブルーハーツは仏教だ!)、論拠としてあがってる文献が微妙という突っ込みどころは多くある。しかし、このような大枠でのJポップ論を真摯にわかりやすく書いた文章は非常に貴重であり、たくさん売れてくれればうれしいと思わされる一冊であった。