LUNA来日最後の公演@原宿アストロホール

昨晩にひきつつづいて行ってきました。
一人で来たのに、結構早く会場についてしまったので手持ち無沙汰でした。とりあえず新作

Rendezvous

Rendezvous

を購入。メンバー四人のサインがついた小さな色紙が特典だった。しかし、色紙ってのは保存に困るから直接CDにサインしてくれたほうがうれしかったな。直接CDに書くと怒る人とかいるのかな。
今回は前座に二組のバンドが出たのだが、良い悪いは趣味の問題としても、もうちょっとブッキング考えてもらいたいなと思った。大阪での公演は少年ナイフでいい感じなのだが、今回の前座はやはりルナのファンとの間に多少温度差があった気がした。
まあともかく始まったわけなんだが、見ている僕もライブビートのときのような迷いが吹っ切れて非常に楽しめた。メンバーも昨日よりリラックスしてたし(まあライブビートはあの雰囲気で録音もしてるから緊張するか)さすがにNHK505スタジオの音の良さにはかなわなかったけど、ディーンのヴォーカルに関しては今日の方が良かったと思う。多分、ライブビートでは普通の(いやもしかして凄く高いのかもしれないが)ヴォーカルマイクを使ってたけど、今日はSM57を使ってからかもしれない。SM57などのヴォーカル用じゃないマイクはいわゆる近接効果ってのがあって、近くで歌うと低音が強調されるのだ。ルー・リード直系と言えるディーンの声は、このように低音が強調されることによって深みと渋みが増してたような気がした。
思うにこの低音系ヴォイスってのは、もちろん生得的な声の質もあるだろうが、近接効果を生かしたクルーニング唱法によって得られるものなのだろう。ギャラクシー時代の初々しさを程よく残したまま、渋い中年になったディーンの歌唱法は、以前のファルセットを多用した歌いからから、この低音クルーニング唱法に少しずつ切り替わってた言える。*1そして最近はインディーズの映画に俳優として出演したり、その巧く枯れたルックスとこの声を上手に利用すれば、ディーンはともすれば新たなルー・リードのような存在に化けるのでは!と思ったのであった。
話を戻すと今日の公演はともかくリラックスして素直にルナの曲を楽しめた。はっきりいって予想していた以上にルナの曲は名曲ぞろいだと思ったし、あの素人くさい(笑)演奏も拙さというよりもある種の余裕さのように思えた。確かに彼等の演奏は、ショーンを除いて、一般的な観点からは巧いとは言い難いけど、親指でソフトに弦を弾くブリタやギターの音量ツマミを上げ下げしながら演奏するディーンは違った意味で巧みだと言える。しばしば演奏技術の良し悪しは、ポピュラー音楽であっても「譜面にある音符を性格に演奏する」というクラシック的な基準によって判断されるが、ポピュラー音楽にあってはエフェクターやアンプ、そしてギターなどの機材をいかに上手く扱うかという点で決まると思う。そういう意味ではアタック感を限りなく消し、心地の良い浮遊感を生み出す彼等の演奏は極めて巧みだと言える。
その点では、一般的な意味でもギターが上手いと言えるショーン・エデンの演奏技術は極めて素晴らしかった。アタック感を感じさせないフィンガリング奏法や浮遊感のあるアームワークやビブラート、すべてがバンドのコンセプトに調和したものだった。もちろんユーモアのある彼の人間性も、ともすればシリアスで暗くなってしまうこのバンドにとって、忘れてはならない一要素だ。

演奏は三回ものアンコールを含み全体で2時間くらいであったろうか。内容は昨日の楽曲+αってとこだが、「ブルーサンダー」は最後の最後にもやらなかった。その代わりというわけでもないが、ギャラクシー500のファーストから最初のシングルとなった「タグボート」を昨日も演奏された「インディアン・サマー」と一緒にアンコールセットの中で演奏された。どちらも2コードだけの曲で、小学生でも弾けるようなリフを繰り返しているショーンの姿がとても面白かった。
それにしてもここまで書いて思うのは、こんなすばらしいバンドが解散するなんてということだ。まあ僕個人としての希望はディーンは今後いいプロデューサーに出会ってもっと多彩な音楽性を持ったソロミュージシャンになってくれればうれしいと思う。他のメンバーもなんらかの形で活躍を期待する。ああしかしディーンは本当にかっこいいオヤジになりそうでうらやましい。僕も渋い声で歌えるようにSM57で練習しようかな。

*1:でもルナの曲にはギャラクシー時代のような擬音語ヴォーカル「ニャーニャー」ってのがいっぱいありますが(笑)