風街の風景

次回の白熊は特集号でまた企画もんをするワケなのだが、一応、私がまた編集長となってるので、下見しながら港区一帯を撮影してきた。久しぶりの本格的な街歩きは楽しかった。本格的といってもただ単に調べもせずに歩くだけなのだが、生まれつきの性格か、知らないとこならでこでも楽しめるので、まさにストレンジャーザンパラダイス。
で、山手線でくるっと回って今回降りたのは田町。これでおそらく山手線は全駅で降りたことになるだろう。
まずは慶応の三田キャンパスの方に向い、東館からキャンパスを横切り、綱坂へ。慶応は丁度オープンキャンパスのようで見学者とその家族などがいたが、休日なので慶応生そのものは見当たらず。慶応生って知りあいに少ないためあまりみたことが無く残念。また行こう。
そして綱坂を登りきって左折、近くには大使館やコンドルが設計した綱町三井倶楽部などビップな風景。開襟のシャツにジーンズと下駄の自分はひどく場違いな感じである。
それから三田の高台を降り、一ノ橋の噴水で遊ぶ子供を羨み麻布十番へ。午後の暑い日差しと軽い光化学スモッグの中、商店街にわき目も振れず歩き通し、鳥居坂を登り六本木の高級住宅街に。大使館や東洋女子大の中等部などの側を通り外苑東通りまでくる。
いつも六本木に来て思うのは、ここには未だにというか、時が止まったみたいに八十年代のワンレン、ボディコンギャル風の人々がいるってこと。やたらオープンカーで走ってる人が多くて、今日も4人の黒人と一人の女性がギュウギュウのオープンカーに乗ってどこかに消えるのを目撃した。
さて、住宅街を抜け、六本木の寂れたビルのそばから赤坂方面にさらに歩く。ヒルズある場所とは違って六本木でも五丁目あたりには、蔦の絡まった一軒家や墓地などがあり古い街並みの様子を残している。そのような場所から眺める東京タワーの風景は軽い眩暈を憶えさせる。その形から既に古いのか、新しいのかさえわからなくなった構造物、それが次回の白熊のテーマなのである。
一丁目からそのまま赤坂まで行こうと思いつつも、翡翠色にそそり立つ泉ガーデンタワーに気を取られ、中を通過しながら神谷町方面に抜ける。テレビ東京などがある城山あたりは都心とは思えないほどの木々が生えており、しばし涼を感じながら坂道をひたすら下る。
神谷町のあたりは初めて来たのだが、まわりを眺める限り、ただのオフィス街としか言い様がなく、行く先も決まらず。ふと路上の地図を見ると「愛宕山」という字が目に入ってきた。そうか、愛宕とはこのあたりか。それに以前から愛宕山という地名に魅かれていたので、たまらずゆかしくなって疲れを忘れて歩き出す。それにしてもこんなとこに山と名乗るものが有るのだろうか、と訝しく思いながらも歩いていると、無機質なオフィス街の風景が徐々に退き、こんもりとした屋敷森と木造の民家などが広がってるくるではないか。「港区」という響きから私が想像する風景とはかけ離れた風景がそこにはあった。そこでもあの無機質で厚かましくもある東京タワーの赤と白は平然とした顔で突っ立っていたのであるが・・・
トンネルの下の階段からその屋敷森のあたりに登ってみると、そここそまさしく愛宕山愛宕神社であった。東京都では随一の海抜24メートルを誇るといえども、周りの高層ビルに圧倒されたその小さな山には寺院、神社のほかNHK放送博物館がひっそりと建っている。神社にて次号白熊の成功を祈願した後、極めて緩い雰囲気を出しているNHK放送博物館に入館してみた。
館内には1組の家族連れのほか、高齢の方々がいるのみで若者とは縁がないようだ。しかし、放送にまつわる展示はともかくとして、4階の資料室ではこれまで放送されたNHKの番組を1日2時間まで無料で視聴できるとある。ヘタな映画を見に行くぐらいなら、ここでNHKの過去のドキュメント番組やドラマ見るのも一興ではないだろうか。貧乏なカップルに是非ともオススメしたいデートスポットだ。
そろそろ日が傾いてきたと思い、愛宕山から降りて、もう一つの森タワーの側から御成門、新橋まで歩く。偶然にも新橋の駅前で細川さんと出会う。実家に帰るそうで、家から一番近い繁華街に来たとのこと。理由はともかく新橋が良くお似合いだと思いました、良い意味で。
写真は愛宕の有る寺院の誕生仏。こんな顔して生まれてすぐに天上天下唯我独尊とおっしゃたのなら私も仏門に下りますよ、そりゃ。他にも多数写真を撮影したが、ここでは無く次回白熊で公開できると思われるので楽しみにして待ってようぞ。