性善か性悪か?

id:yasaiさんのとこで取り上げられている
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040704-00000020-san-soci
について
id:yasaiさんには直接メールで異論を書いたのだが、はてな内でのこの記事に関する指摘をみて、一言書かねばと思い普段書かないようなことを書く。
大半の議論はこのような凶悪犯罪が繰り返されないように刑罰(または少年に対する刑罰)を強化すべきだというものであるが、この意見に対しては大きな異論がある。
凶悪な犯罪が起こるべきでないのは当然だが、そのような犯罪に対して厳罰を課すことが犯罪の抑制になるということはあまりに短絡的だといわざるを得ない。むしろ刑罰の強化は再犯率の上昇に繋がるという意見のほうが一般的だ。
特に日本の場合、再犯率は50パーセントくらいで極めて高く、この事件のような不幸な結果は日本の司法制度における更生がうまくはたらかなったと思われる。
確かにこのような凶悪犯に対し死刑を執行すれば、再犯は起こらないであろうが、死刑とは更生とは全く違う。ここで一つ考慮に入れるべきものは、最近欧米などで取られている制度、修復的司法である。
修復的司法とは、被害者と加害者とが直接対面しお互いに話し合うことで問題を解決する、これまでの報復的な司法制度とは根底から違う制度である。被害者と加害者のほか、第三者や双方の家族、友人、コミュニティの成員なども参加して行われる非常に時間がかかるやり方である。それでも様々な報告により、再犯率の抑制に繋がることが知られてきている。
もちろん、私自信どのような加害者にもこのような制度が効果的であるものではないだろう。だが、死刑という更生の否定によって再犯率を減らせると考えることと、どちらが良い策かを考えてほしい。
修復的司法について詳しくは
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssst/docs/2004/12kamosida.htmlの後半や
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/shohyo1702.htmlの書評
などを読んで欲しいとは思う。
あと死刑制度については、この選挙期間中ということも考えて
http://ch.kitaguni.tv/u/5411/%bc%d2%b2%f1/0000092567.html
などを読んでみて欲しい。

さらに言えば、犯罪と刑罰について姓善説、性悪説といった議論はあまり意味のあるものとは思わない。修復的司法の有効性は何も性善説から訴えるものでなく、その再犯率抑制や被害者側の癒しという社会にとって良い効果という面で評価できるものだ。さらに性悪説によって厳罰化を訴える人には次のように考えてみて欲しい。
「人間はすべて生まれもって悪であるから、犯罪者に更生などはありえず死刑にすべきだ」と考える人間のあなたは同様に悪である。

追記:私もこの事件の加害者など死んでしかるべきだと感じないわけでもない。しかし、この感情からもっと積極的に死刑を執行すべきだとは思わないということが言いたい。少年法についてはこんな大人のやったことによって厳罰化が進んだら、今の少年たちは可愛そうだと思う。